今回紹介する「確率捜査官 御子柴岳人」は数学をテーマにした作品で、数学的な観点から事件を紐解いていく異色の作品です。
主人公の数学者・御子柴岳人が、「ベイズ推定」「不確実性下における選択」「ゲーム理論」「サークル仮説」といった数学理論を駆使し犯人を追い詰めていきます。
数学をテーマにしているので読みにくそう印象がありますが、作中に出てくる数学用語や理論は分かりやすく説明されていて、数学に対する考え方が多少なりとも変化する作品だと思います。
画像引用元:KADOKAWA「確率捜査官 御子柴岳人」
作者 :神永学
巻数 :既刊3巻(2018年11月現在)
数学をテーマにした異色な作品「確率捜査官 御子柴岳人」のあらすじ
冤罪を防ぐために効率的かつ正確な取り調べ方法の検証を目指し、警視庁世田町署内に新設された「捜査一課特殊取調対策班」。
そこに、無理な取り調べに反発し同僚を殴り謹慎になった新米女性刑事・新妻友紀は、常識外れな行動ばかりを繰り返す数学者・御子柴岳人に出会います。
警察署内で猫を飼い、所かまわずアメを頬張り、取り調べ中にはサングラスをかけ、無邪気でワガママな行動が目立つ御子柴は、「確率」を武器に圧倒的推理力で、人間の心の深層を暴いていきます。
御子柴に振り回される新妻は、直情的で一見正確な取り調べを目的とする「捜査一課特殊取調対策班」に向いてなさそうですが、誰よりも被害者・加害者の心に寄り添えるキャラクターです。
この二人がペアを組み、様々な数学理論を利用しながら犯人を追い詰めていきます。
数学理論を分かりやすく知れる「確率捜査官 御子柴岳人」感想
「ベイズ推定」「不確実性下における選択」「ゲーム理論」「サークル仮説」など、様々な数学理論を利用して犯人を追い詰めていきます。
数学の様に公式が出てきて長々と説明されるより、事件の内容に合わせてそれぞれの理論を説明してくれるので、「難しくて分からない・・・」なんて事はありませんでした。
例えば、物語上で出てくる「ベイズ推定」という数学理論が登場します。「ベイズ推定」とは、入手できるデータを証拠として、確率を修正していく推定方法です。
私たちは普段、無意識にこの理論を使っています。
例えば、自宅で鍵を無くしたとします。間取りは以下の通りです。

一番探す確率の高い所に、図のように確率を振り分けていきます。
30を振ったテーブルを探した結果、見つからなかったら、ここの30を消去して別のところに振り分ていきます。

そうすると次に探すのはベッドというように、なにか探し物をする時には、自分の経験から考えて可能性の高い所から順に探していきます。
このように、経験則として認識していることを数値化して表すことを「ベイズ推定」と言います。
このほかにも様々な数学理論が登場し、図でわかりやすく説明してくれるので、数学が苦手な人でも分かりやすい内容になっています。
確率を駆使し犯人の心の真相を暴いていく物語は、今までと違った推理で新鮮な内容かと思います。気になっている人は、是非一度読んでみてはいかがでしょうか。
- 数学理論をテーマにした異色の作品
- 様々な数学理論が登場し、分かりやすく説明してくれる内容
- 御子柴と新妻の凸凹コンビが魅力
作者「神永学」の他の作品のご紹介
自費出版した『赤い隻眼』が話題を呼び、2004年10月『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』(『赤い隻眼』の改題)でプロデビューしました。代表作である「心霊探偵八雲」シリーズは、舞台化、アニメ化などされています。